先日、診察にて40代の女性が「夜寝ていると右手が痺れて起きてしまう」との訴えでご来院されました。
診察で話を聞いていると、過去に右手のケガがあり、仕事等で日常的に指を酷使するとのことでした。
レントゲン検査では異常がなかったため、超音波(エコー)検査したとろ、右首の手のひら側にある「正中神経」と言われる神経が腫れており、「手根管症候群」と診断されました。
今回はこの「手根管症候群」についてお話ししたいと思います。
過去のケガが原因にもなる?原因とリスク
手根管症候群は、手首の手根管と呼ばれる部位(手首の手のひら側のあたり)で正中神経が圧迫されることによって引き起こされる症状です。
主な原因としては、
・過去の骨折やケガで手根管が狭くなる
・手首のケガによる炎症
・手指の過度使用
・加齢などでの骨の変形
・リウマチや糖尿病などの内科的疾患 など
特に抱っこなどで手をよく使用する出産直後のお母さんや、ハンマーをよく使う職人、ハサミで指をよく使用する美容師などで多く見られる疾患です。
「寝ていると手が痺れる」手根管症候群の症状
手根管症候群の症状は、主に正中神経が障害されたときに起こる症状です。
以下が主な症状になります。
- 手のしびれやチクチク感:親指、人差し指、中指、薬指の内側に現れます。
- 手の力が弱まる:物を持ったり握る力が低下することがあります。
- 手のひらや指の痛み:特に夜間や長時間の手の使用後に痛みを感じることがあります。
- しびれが手や腕に広がる:手首から肘にかけての範囲でしびれを感じることがあります。
診断と検査方法
手根管症候群の診断は、医師による詳細な問診と検査で行われます。
患者様の症状や日常生活のパターン、過去の外傷歴などを把握して、確実な診断を行います。
また神経学的な検査や画像検査(MRIやエコー)により正中神経の圧迫状態を確認します。
当院ではレントゲンによる手首の骨の形状の確認と、超音波(エコー)検査にて正中神経の病態を把握して診断をします。
手根管症候群の治療法とリハビリ
手根管症候群の治療は、症状軽度であれば手の使用を控えて安静にすることで改善します。痺れや痛みを伴う場合は、鎮痛薬や痺れを抑える薬の使用や、手根管部にステロイド注射を行うこともあります。
また、リハビリテーションによって手の筋力の強化し、手首の柔軟性を改善し、パソコン作業中の姿勢などの日常生活動作を見直すことも重要になります。
それでも症状が改善しない場合や、高度に骨変形している事が原因で症状を繰り返す場合などは手術することもあります。
当院では手術は行っていないので、手の専門である病院へ紹介をします。
まとめ
今回の患者様は、「手根管症候群」の診断を受け、ステロイド注射、痺れや痛みに対し鎮痛薬処方され、約2週間程度の安静で症状改善しました。
手根管症候群は手首の痛みやしびれを引き起こす症状であり、早期の診断と適切な治療が重要です。
内服薬やリハビリによって症状が改善することが多いですが、進行している場合には手術治療も選択肢となります。予防にも積極的に取り組み、日常生活で手首への負担を減らすよう心がけることで、手根管症候群のリスクを軽減できます。
しっかりとした対策を講じることで、手首の痛みから解放されることが期待できます。