先日診療していたら70代の女性の方が「何もしていないのに急に右腕が痺れ始めた」とおっしゃっていました。最初に、その方のお話を聞くと「脳からきているのではないかと不安になってしまって」とかなりご心配されているご様子でした。
実際にレントゲンを撮影して、身体の所見をとっていくと「頸椎症性神経根症」の疑いが強い方でした。
患者様の訴えとしては「じっとしている時から痛みや痺れが強くある。」「首を後ろに反ると痺れが増える」「腕に力が入りずらい」です。
レントゲンを見ると頸椎は変形していて、首の神経に大変負担のかかっている状態でした。
「じっとしている時から痛い」ということだったので神経の炎症が考えられます。
この時期には除痛治療をするためにしっかりと服薬で痛みをコントロールしながらリハビリを行なっていくのが良いと思いますので、薬物療法と理学療法をオーダーしました。
このような状態だと「脳」からの心配をする方も多くいるのかなと思います。
簡単な区別の仕方
整形外科で勤めていると多くの患者様で同じように「脳の病気」を心配されて来られる方が多くいます。
当然、私たちも気をつけながら診療を行います。ただどの方法でも完璧に区別ができることはないです。やはり詳細な検査をしていかないと完璧に区別はできません。
しかし、私たち整形外科の場合は、その痛みや痺れが「体の動きに伴って増えたり、楽になる」このような状態であれば整形外科領域で問題があるのではないかと考えることもできます。
「脳の病気」の場合は、脳に問題が起こっているので、「症状が体の動きに伴って増減することは少ないです。」脳は体の動きで負担が増えたり、減ったりはしないため。
ただ、これだけでは完璧に区別できわけではないので、あくまでも参考までに考えていただけると不安は少し解消されるのではないかなと思います。
「脳」の場合は生命予後にも大きく関わりますので、当院でも疑わしい場合は、他科の受診を勧める場合もございますし、最初からそのようなことが疑いが強いような方は早急にそちらの受診を勧めます。
今回の患者様の話
今回の患者様は首の動きに伴って、症状の増悪が出ていましたので、頚椎の病気で間違いないかなと思います。
年齢を重ねると首の構造物である椎間板などが摩耗するため神経の出入り口を狭めて、圧迫すること症状が出現してきます。「なんで、急に」というお声も多く聞こえそうですが、症状が出てくる方でレントゲンを確認すると「今までよく耐えてたね」と体を褒めたくなるようなギリギリを保っている方もいらっしゃいます。元から負担のかかっている状況下で生活をしていた可能性が高いです。
なのでいつ症状が起きてもおかしくはなかったと考えた方が自然です。
今回の方は安静時から痛みを感じており、神経周辺の炎症も考えられました。最初から鎮痛薬などで痛みをコントロールしながらリハビリを行っていくと、次回来院時には痛みは大きく軽減しており、またあの痛みが出ないようにご自宅でリハビリを頑張っている様子でした。
当院では理学療法士が在籍しているので、リハビリでは首に負担のかからないような姿勢の獲得や、固まっている筋肉、関節を動かしていき、変形性している部分への負担を取り除いていくことをしていきます。
何か症状を感じたなら
我慢をせずに、お近くのクリニック・診療所を受診しましょう。